任意後見契約の重要性 「知らなかったせいで後悔する」ことを防ぐ

皆さんは「任意後見契約」という制度をご存知でしょうか?

終活の専門家として、私はこの制度の重要性をとても強く感じています。知っているか知らないか、この違いが将来の安心に大きな差を生みます。

日本では多くの場合、高齢者の方が認知症になってから成年後見制度を利用しようとするケースが見られます。しかし、認知症が進んでから手続きを始めると、非常に時間がかかり、ご家族の負担が大きくなってしまいます。

例えば、認知症になった母親を施設に入れようとした際、施設によっては後見人の選任が必要となることがあります。その場合、後見人の申し立てをするには、母親の出生から現在までの戸籍や財産状況などをすべて調査し、家庭裁判所へ申し立てを行わなければなりません。その後、成年後見人が決まるまで早くても約3ヶ月、遅いケースでは半年~1年ほどかかることもあります。

その間、ご家族は認知症の方の日常的なケアや金銭管理など、多くの負担を抱えることになってしまいます。

このような負担を事前に軽減するために効果的なのが、「任意後見契約」です。

任意後見契約は、まだ元気で判断能力があるうちに、「将来もし認知症になったら誰に支援してもらいたいか」「どんなサポートをしてほしいか」をあらかじめ自分で決めておくことができる制度です。

この記事では、この「任意後見契約」について、分かりやすく詳しくご説明いたします。少し長めですが、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。


目次

任意後見契約とは?

任意後見契約とは、将来自分の判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人に後見人を依頼しておく契約です。この契約を結んでおけば、認知症や病気などで判断能力が衰えた際に、あらかじめ指定した後見人が財産管理や契約手続きなどを適切に代行してくれます。

成年後見制度には、以下の2つの種類があります:

  1. 法定後見制度(補助・補佐・成年後見)
    • すでに判断能力が低下した人が対象
    • 家庭裁判所が後見人を選任する
    • 必要な支援の範囲が法律で決まっている
  2. 任意後見制度(今回のテーマ)
    • 判断能力があるうちに契約できる
    • 自分で信頼できる後見人を選べる
    • どのような支援をお願いするか自由に決められる

なぜ任意後見契約が必要なのか?

               出典:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況

過去5年間で後見人の申し立て件数は増加しています。しかし、実際のデータを見ると、「任意後見契約」を利用している方はごく少数にとどまっています。

多くの方は認、知症が進行してから慌てて後見人の申し立てを行っています。任意後見契約の存在を知らなかったり、知っていても「まだ大丈夫」と後回しにしているうちに認知症が進行してしまった、というケースが大半なのです。

1. 認知症になってからでは遅い

認知症や病気で判断能力が低下した後では、任意後見契約を結ぶことができません。その場合、法定後見制度を利用するしかなくなり、家庭裁判所が後見人を決定することになります。自分で信頼できる人を選べなくなるため、早めの対策が必要です。

2. 家族の負担を軽減できる

任意後見契約を結んでおけば、家族は手続きの煩雑さから解放されます。突然の判断能力低下が起きても、事前に決めておいた後見人がスムーズに対応できるため、トラブルを未然に防ぐことができます。

3. 財産管理をスムーズに行える

認知症が進行して判断能力が低下すると、たとえ家族であっても、本人の口座からお金を引き出したり、不動産を売却したりすることができなくなります。これは、「財産を安全に守る」という法的な理由から制限されているためです。

こうした手続きを代わりに行えるのは、**成年後見人(法定後見)や任意後見人(任意後見契約)など、法的に認められた正式な代理人だけです。**認知症が進行してから成年後見人を選ぼうとすると、その手続きには非常に時間がかかります。その間、家族は銀行での手続きや財産管理が一切できず、生活費や介護費用の支払いに困るという状況に陥りやすくなります。

だからこそ、認知症になる前にしっかりと対策を立てておくことがとても重要なのです!

4. 自分の意思を最大限反映できる

法定後見制度では、家庭裁判所が管理するため、本人の希望が十分に考慮されないケースもあります。しかし、任意後見契約なら、本人の希望通りに管理してもらえます。
「自分の財産は介護費用だけではなく、旅行や趣味のためにも使いたい」と明確にしていると、適度な旅行を楽しめるように財産を管理してもらえたりもします。


任意後見契約を結ぶ方法

1. 信頼できる後見人を選ぶ

任意後見契約の最大のメリットは、「自分が信頼できる人を後見人として指定できること」です。しかし、後見人の選択を間違えると、財産の管理や生活の質に大きな影響を与えるため、慎重に選ぶ必要があります。

近しい家族・家族の中から選ぶ場合に適している人

・本人の希望や価値観を理解しているか
・誠実で、金銭管理がしっかりしている
・面倒見がよく、責任感がある
・遠方ではなく、サポートしやすい環境にある

子供がしっかりしていれば、最も信頼できる選択肢です。ただし、兄弟姉妹の間で不公平感が出ないように調整が必要。 子供がいない場合は信頼できる兄弟姉妹に任せるのも一つの手です。ただし、恒例の兄弟姉妹の場合、将来的に支援が難しくなる可能性があります。

家族以外から選ぶ場合

司法書士・弁護士・行政書士
・成年後見制度に詳しく、裁判所への手続きもスムーズ
・専門知識を活かして、財産管理や法的手続きを適切に処理してくれる
特に司法書士は成年後見業務に強い

社会福祉士・NPO法人
・高齢者福祉や介護制度に詳しい
・生活のサポートや福祉サービスの手続きがスムーズ
・高齢者施設との連携がしやすい

高齢者施設・老人ホームの職員
・施設に入所予定なら、身近な職員が対応しやすい
・ただし、金銭管理の面でトラブルを避けるため、法人単位での契約が推奨される

避けた方が良い人

・親しくても、金銭管理に不安がある人
・本人の意向を無視する可能性のある人
・感情的になりやすく、親族間トラブルに巻き込まれる人
・本人よりも利益を優先する人
 

任意後見契約は、公正証書で作成するため、簡単に取り消しはできません。契約後に「やっぱりこの人に任せるのは不安….」となっても簡単に変更できないので、慎重に選ぶことが大切です。



2. 契約内容を決める

  • 財産管理(預貯金、不動産、年金管理)
  • 介護や医療の手続き
  • 日常的な支払い
  • 介護施設の契約など

3. 公正証書を作成する

任意後見契約は公正証書で作成しなければなりません。公証役場で手続きを行い、正式な契約を交わします。

4. 必要に応じて監督人をつける

任意後見契約を発動させる際、裁判所が任意後見監督人を選任します。この監督人が後見人の行動をチェックすることで、財産の不正利用を防ぐことができます。


まとめ

「まだ元気だから大丈夫」ではなく、元気なうちに準備することが大切です。

任意後見契約を結ぶことで、自分の意思を反映した財産管理・介護の準備ができ、家族の負担を軽減できます。特に、認知症になると契約ができないため、早めの準備が必須です。

多くの人にこのことを知ってもらい、老後の負担を少しでも減らすために、ぜひ家族や知人にもこの情報を共有してください。

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