「任意後見契約」の「代理権目録」はどのように決めれば良いか?

任意後見契約を結ぶ際には、後見人にどのような権限を委ねるのかを明確にするために「代理権目録」を作成します。代理権目録を適切に決めることで、本人の意思を尊重しつつ、円滑な財産管理や生活支援が可能となります。

本記事では、代理権目録の基本的な決め方や注意点について詳しく解説します。


目次

代理権目録とは?

代理権目録」とは、任意後見契約において、後見人に委ねる具体的な権限を一覧にしたものです。本人の意思に基づいて作成され、公証役場で公正証書として残されます。

代理権目録を決める際には、どの範囲まで後見人に権限を与えるかを慎重に検討することが重要です。


代理権目録に含めるべき内容

代理権目録には、主に以下のような内容を含めることができます。

財産管理に関する権限

  • 銀行口座の管理(預金の引き出し、振込手続き)
  • 年金や保険金の受領
  • 税金や公共料金の支払い
  • 不動産の管理・賃貸契約の締結
  • 金融資産の運用・売却

契約手続きに関する権限

  • 介護施設の入所契約の締結
  • 医療費の支払い手続き
  • 各種サービスの契約・解約(携帯電話、インターネット、光熱費など)

生活支援に関する権限

  • 家賃や施設費の支払い
  • 生活必需品の購入
  • 介護サービスの手配

医療・介護に関する権限

  • 医療機関との契約手続き
  • 介護保険の申請手続き
  • 介護サービスの選定

注意:任意後見契約では「治療方針の決定」や「延命措置の拒否」などの医療行為に関する決定権は持てません。これらは事前指示書(リビングウィル)など別の手続きを活用する必要があります。


代理権目録を決める際のポイント

本人の希望を最優先する

代理権の範囲は、本人の生活や価値観を反映させることが大切です。たとえば、「資産運用は後見人に任せるが、不動産の売却は本人の意向を最優先する」など、具体的な希望を盛り込むとよいでしょう。

代理権の範囲を明確にする

権限を広く与えすぎると、後見人の判断が大きくなりすぎる可能性があります。逆に狭すぎると、後見人が必要な対応を取れず、柔軟なサポートができなくなります。何を委ね、何を委ねないかを慎重に検討することが重要です。

具体的な手続きをリストアップする

「財産管理を任せる」といった抽象的な表現ではなく、

  • 「月々の年金の受け取りおよび生活費の管理」
  • 「定期預金の解約および再契約の手続き」

のように、具体的な手続き内容をリストアップすることが望ましいです。

将来の状況変化を考慮する

契約時点では想定していない事態が発生する可能性があります。そのため、一定の柔軟性を持たせた表現を使うことも検討しましょう。

例:

  • 「不動産の管理・賃貸契約の締結および必要に応じた売却」
  • 「生活に必要な範囲での資産運用・売却」

代理権目録の作成プロセス

ステップ1:どの範囲の権限を委ねるか検討する

まずは、何を後見人に任せたいのかをリストアップします。家族や専門家と相談しながら、本人の意向を反映した内容を決めましょう。

ステップ2:公証役場で相談する

代理権目録を作成したら、公証役場で公証人と相談し、適切な表現や法的な問題点を確認します。

ステップ3:公正証書として作成・登録する

代理権目録を含む任意後見契約を公正証書として作成し、正式な契約として成立させます。


まとめ

任意後見契約の代理権目録を決める際には、

財産管理、契約手続き、生活支援の具体的な内容を決める
本人の希望を反映し、必要以上に広すぎない範囲で決める
公証役場で相談し、法的に適切な形で作成する
将来の変化を考慮し、一定の柔軟性を持たせる

これらのポイントを押さえながら、慎重に決定することが大切です。

任意後見契約は、将来の安心を確保するための大切な制度です。適切な代理権目録を作成し、安心できる後見体制を整えていきましょう。

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